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よろず小説とたまーに日々のつぶやき
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パラレルでベイブレード、カイタカでボユリ
以前から書きたかった作品の序章的な感じ。
全部書くとしたら、物凄く長くなるんでどうしよう…



+ + + + + + + + + +




散らかった部屋に一人で

 荷造りのために散らかった部屋を改めて見て、自分らしくないと
思わず苦笑した。
 生まれてからずっと籠の鳥だった。扉が開かれるのを待てなくなった
ただそれだけの理由だ。
 扉が開かれることがないのなら、格子を曲げてでも外に出ようと
決めて少しずつ準備をしてきて、ようやく決行日を迎えた。
 「長かったな…よく我慢が出来たことだ」
 もう戻らないかも知れない部屋を思い出にするように、散らかった
ものを片付けながら一つ一つ確認する。
 ギリギリまで荷造りをしなかったのは、部屋の中を誰かに見られて
雰囲気の違いを見取られないため。最も目立つであろう両親との写真や
愛用の品は既にカバンに収めている。
 そう大きな荷物ではない、これから長旅をするのに邪魔にならない
程度に止めてあった。元々、自分は余計なものを持つのが嫌いだから
これで丁度いいのかも知れない。
 籠が窮屈なのに我慢が出来なくなったのではなく、逢いたい人間の
手がかりを見つけたことが旅立ちのきっかけだった。
 「…木ノ宮」
 離れ離れになってから、もうどのくらい経つのか覚えていない。
愛しい笑顔は、記憶の中にしか存在しないのだ。
 仲間との絆が途切れていないことは信じている。きっといつか再会
することを誓って、各々が輪廻の輪に身を投じたのだから。

 深夜、警備員も手薄になる交代時間を狙って部屋を抜け出すと
待ち合わせの場所には既に自分が秘密裏に購入した長距離走行用の
オフロードバギーが着いていた。
 「早かったな、ボリス」
 「こんな日にお前を待たせたりしたら、なに言われるか分かったモン
じゃねぇ」
 大げさに肩をすくめて見せる昔馴染みは、ユーリを探してロシアから
閉鎖状態の現在の日本に単身密入国してきたという。
 「しかし、お前よくこんな車用意できたな。転生しても“火渡”に
生まれただけのことはあるじゃねぇか」
 「使えるものは限界まで使う、お前も同じ立場なら俺と同じ行動を
取ったくせによく言う」
 「そりゃー、俺はユーリのためなら喜んでするぜ」
 「水や食料も積み込んであるな」
 「当然、なかったら日干しになっちまう」
 「…全部俺の金で用意したのに偉そうな奴め」
 「あいにく、俺は不法入国者なんで金がねーよ。お前と合流できた
だけで御の字だ」
 バギーのエンジンを掛けて走り出す。目指すのは関東地方、今いる
九州からでは悪路のせいもあって、はるか遠くに感じられるがじっと
しているよりはマシだと思った。
 「レイが関西地方にいるのと、マックスが東北から関東へ向かって
いるのを拾えればいいんだが…あいつらもじっと待ってるような性格
ではないからな」
 「行き違いにならね―ように注意するしかねぇぜ、その辺は」
 渋い顔になるボリスを横目で見て、口を開く。
 「ユーリの居場所はつかんだのか?」
 「多分関東ってだけだな。木ノ宮の方はどうなんだよ」
 「千葉にいることまでは突き止めてある」
 さらりとそう言い返せば、ボリスはため息をついた。
 「やれやれ、有能ですこと」
 「俺が逃げたことは直にばれるだろう、追っ手がかかれば戦闘に
なるかも知れんが用意はいいのか?」
 「とりあえず弾だけは数確保してあるぜ」
 「…お前に持たせたら、あっという間に消耗するな」
 「どうせ俺はトリガーハッピーだよ!撃つの好きで悪いか!」
 「十分すぎるほど悪いだろう…よほどでない限りはナイフを使え」
 「まぁ、ナイフの方が慣れてていいんだけどな」
 「一体どっちが得意なんだ…」
 思わずぼやけば、ボリスはあからさまに首をひねってみせる。
 「さぁ?どっちも腕は確かだと思うぜ?」
 「そんなことは承知してる」
 戦闘のイロハは記憶に叩き込まれている。実用することになったのは
ありがたくないことだが、使えるものを放置できるほど優しい環境では
ないことだけは確かだ。
 「あー…早くユーリに逢いてぇ」
 「…そうだな」
 木ノ宮は元気にしているだろうか、辛い目に遭っていないといいが。
ボリスのように言葉に出せるほど素直でない自分を歯がゆく思いながら、
車窓から空を見上げる。
 この国のあらゆるものが変わってしまっていても、月だけは昔と同じ
ように地上を照らしていた。

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