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よろず小説とたまーに日々のつぶやき
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 以前から考えていた、スパロボNEOでゴウザウラーの
拳一機械化ネタ。 ゴウザウラーはノーマルカプの宝庫です。



+ + + + + + + + + +




眠れない夜は何をしてすごそう?

 同室の友人たちが寝静まったのを確認して、身体を起こす。
 「さーってと、ブリッジにでも行くか」
 服を着替え終わると物音を立てないように部屋から出た。
 機械化光線を浴びてしまってから1ヶ月近くになる。ありがたくない
ことに身体の機械化は順調に進行しており、拳一は人間としての身体機能を
だんだんと喪失していっていた。
 「失礼しまーっす」
 「よーう、茶でも飲むか?」
 「あ、もらいます」
 今日の見張りはマジンガーチーム。眠れなくなってからは毎日イオニアの
ブリッジで見張りを手伝うことに決めている。
 「ハイ、どうぞ。熱いから気をつけてね」
 「ありがとうございます」
 手渡された湯飲みからは湯気が盛んに立ち上り、かなり熱いはずなのだが
拳一はその温度も感じることが出来ないことにうんざりしていた。
  ―睡眠、温感、力の入れ具合、あとなんだったっけ…
 「拳一、眠れそうなら寝ろよ?何かあったら起こしてやるから」
 「え、あ、ちょっとボーっとしてただけです」
 「そっか」
 年長組にも気を使わせているのがわかって、一層嫌になる。食事も最近は
固形物を受け付けなくなってきて、ドリンクタイプのゼリーを飲むのが限界に
なってきていた。生身の部分を維持するために、食事は欠かせないのに。
 もちろん、このことを知っているのは年長組でもごく一部のメンバーだけだ。
ザウラーズでも教授と秀三だけしか知らないはず。
 「言えるはずねぇよなぁ…」
 ポツリとつぶやいて、レーダーの画面に視線を向けた。

 「眠れない…どうしよっか」
 しのぶはそう口に出して、ちょっと考える。同室の友人たちはよく眠っている
様子で静かな寝息だけが部屋に満ちていた。
 一度夜中に目が覚めてしまうとなかなか眠れない。
 「…少し散歩でもしてこようかな」
 このまま横になって目を閉じていても眠れそうにない。気分転換でもすれば
眠れるかも、そう思って起き上がった。
 「パジャマでうろうろするのは恥ずかしいなぁ…それにちょっと肌寒いし」
 考えた末に、パイロットスーツを身にまとうことに決める。この格好なら、
何かあってもすぐ対応できると思ったからだ。
 「じゃあ、行ってきます」
 一応そう声をかけて部屋から出ると、大きく伸びをしてどこにいくか考える。
 「どこに行こうかな?」
 ゆっくり気の向くままにしばらくイオニア内を歩く。年長組もほとんどが
部屋で休んでいるようで、誰にも出会うことはなかった。
 「あと行ってないのは格納庫とブリッジかぁ…」
 格納庫は深夜に向かうには少し寂しいので、ブリッジに向かうことにする。
まさか、先客がいるとは思わなかったのだけれど。
 「拳一?なんでブリッジにいるの?」
 「お前こそ、なんでこんな時間にパイロットスーツなんか着てんだよ!?」
 「え、ちょっと眠れなくて…それに肌寒かったから」
 「お、俺もそうだよ」
 ブリッジにいる理由は言いたくない。拳一はとりあえず適当な言い訳をして
みることにした。
 他の誰でもなく、しのぶにだけは知られたくなかった。今の自分の状態を
知ればきっとしのぶは気に病むに違いないからだ。
 彼女を庇って機械化光線を浴びた。それは事実だったが、しのぶのせいとは
まったく思っていないのだから。
 「とにかく、もう遅いぜ?部屋に戻れよ」
 多少つっけんどんな言い方になってしまったが、拳一にはそう言うしかなかった。
 「拳一が戻るときに、一緒に行こうかなって」
 「な」
 そう来るとは思わず、口をパクパクさせている間にしのぶは拳一の隣の席に
腰を下ろす。
 「見張りの手伝いしてたんでしょ?まだ眠れそうにないし、一緒に手伝うよ」
 「あ、あのなぁ…」
 返す言葉につまっている拳一をよそに、しのぶはさやかからお茶を受け取る。
 「優等生のお前らしくねー」
 「いいじゃない、たまには夜更かししたって」
 そういってしのぶは笑う。彼女の笑顔に、隠し事がある拳一は少し胸の痛みを
覚えた。
  ―痛覚なんて、一番最初に失くしたはずなのに。
 「俺は最近夜更かしになれてるからな、お前が先に寝ちまうに決まってる」
 「こら、ちゃんと寝ないと身長伸びないぞ?」
 「うるせー」
 軽口を叩く2人を見て、甲児はくっくっと笑いをこらえる。
 年長組だって、はやく拳一を元の身体に戻したいのだ。そのために力を尽くす
つもりでいた。心に影を落とすような隠し事なんて、無い方がいいに決まっている。

 それから数十分して、拳一はしのぶが静かになったと思ったとたん、肩に重み
を感じた。
 「しのぶ?」
 顔を向ければ、寄りかかってすやすやと寝息を立てている彼女がいた。
 「とうとう寝ちまったか、結構頑張ってたけどな」
 「俺、しのぶを部屋まで連れてってきます」
 「おう、気をつけてな」
 起こさないように気をつけながら、そっと抱き上げる。
 「まったく…無理しやがって」
 勘のいいしのぶのことだ、眠れないことに気づかれたかもしれないと思うと
拳一の胸は痛みを訴えた。
 「…それでも、護るって決めたんだ」
 しのぶがいてくれたから、人間でいられる。きっと、この身が全て機械に
変わってしまう最後の瞬間まで人間でい続けられる。
 「おやすみ、しのぶ」
 眠りを失った自分の代わりに、せめて彼女がいい夢を見られますよう。
 

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